皆さんは坐骨神経痛と聞くとどういうものを思い浮かべますか?
坐骨神経が圧迫され腰から足にかけて痛み、痺れがでる。そういった解釈の方がほとんどだと思います。今回はその坐骨神経痛についてお話ししようと思います。
まず坐骨神経痛というのは「原因ではなく結果としてそういった名称がついている」という事を頭に入れておいてください。どうしても、坐骨神経痛という名称から、坐骨神経が痛みや痺れの原因になっていると思いがちですが全くの逆です。
もちろん痛みや痺れが発生するにはそれ相応の原因があります。
現在の医療ではその痛みや痺れの原因がよくわからないので、神経が原因と想定して「坐骨神経痛」という名称をつけているのです。
それでは、そもそも神経が原因だという想定が間違っているとしたらどうなるでしょうか?
神経が原因という思い込みを捨てない限り、本当の原因にたどり着くことができなくなってしまいます。
神経の役割
まずはじめに神経というものがどういうものか、その説明からはじめましょう。筋肉を動かすための神経、運動神経は脳からの電気信号を筋肉に伝えて筋肉を動かすという役割を担っています。神経の役割は分かりやすく言うと「電気コード」のようなものです。
ここで少し想像していただきたいのですが、神経を圧迫したら筋肉が勝手に動くでしょうか。もしそんなことが起きれば、私たちの体は正常に動かせなくなってしまいます。もちろん、圧迫されすぎて断線した場合は麻痺(電気が正常に流れない)は起こります。
電気コードを踏みつけたところで勝手に電化製品の電気がついたり消えたりするでしょうか?電気コードはあくまでもコンセントから流れてきた電気を電化製品本体に伝えるだけです。神経もそれと全く同じなのです。
イメージやすいように、ここまでは運動神経で話をしてきましたが、感覚神経も同じです。運動神経は脳から筋肉などに信号を送る役割でしたが、感覚神経は逆に各センサーで得た情報を脳に伝えるのが役割です。痛みが痛みを感じるセンサーでキャッチされて、それが電気信号となって神経を通って脳に伝えらます。神経の途中を圧迫されただけで、痛みや痺れを感じてしまうと、実際は痛みが発生するようなことは起きていないのに、痛みを感じてしまうことになるので、体は混乱してしまいますよね。神経を圧迫されて起きるのは「新たな電気信号の発生」ではなく、「麻痺」なのです。
「麻痺」と聞くと重症のようなイメージを持たれる方も少なくないかもしれませんが、私たちの生活の中でも結構日常的に起きています。一例としてハネムーン症候群を紹介します。
これはワキを通る橈骨神経(とうこつしんけい)が長期間圧迫されることにより起こる症状で、主に手首を反らすことができなくなります。
ハネムーンで腕枕をして寝た旦那さんの手が次の日上がらなくなった、というところから名前が由来しています。
他にも酔っ払って湯船に腕をかけたまま寝てしまい、次の日手が上がらなくなるなど、比較的身近な麻痺と言えます。これらのケースでは完全に神経が断裂しているわけではないので、経過を待つことで回復していきます。
ところで、麻痺という観点で坐骨神経痛を見てみるとどうでしょうか?坐骨神経が圧迫されて痛みや痺れが生じているというのであれば、同時に坐骨神経が対応している筋肉も麻痺して動かせなくなっているはずです。しかしほとんどの場合痛みや痺れが現れるだけです。つまり坐骨神経が圧迫されて痛みが出ているわけではなく、その周辺に痛みや痺れが出る何かしらの原因があるから、痛みや痺れを感じているのです。
神経を圧迫されると痛みが出ると言う固定概念を捨ててください
なぜ神経が圧迫される事で痛みが出ると感じる人がいるのでしょうか?それは誰しもが持つ神経=痛むという固定概念があるからです。神経痛については過去の記事がありますのでこちらを読んでみてください。
ところで、なぜ神経が原因ではないのに、その周辺が痛むだけで坐骨神経痛と診断されてしまうのでしょうか。
筋肉が原因となって起きる血行不良から発生する痛みは、現在正確に診断する方法がありません。そのため、坐骨神経の走路に沿って痛みが生じると、坐骨神経に原因があると判断して坐骨神経痛と診断されてしまうのです。
一般的に坐骨神経痛の原因として脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、梨状筋症候群などが挙げられています。脊柱管狭窄症では狭くなった脊柱管、腰椎椎間板ヘルニアでは飛び出した椎間板、梨状筋症候群では梨状筋付近が「神経を圧迫することによって坐骨神経痛が生じる」とされています。
これらの原因とされている症状も、あくまで坐骨神経痛と診断された人が併発している症状に過ぎず、決してこれらの神経圧迫が坐骨神経痛を引き起こしているわけではないのです。
これらをまとめると、
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- お尻から脚にかけて原因不明の痛み、痺れが出ている
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- 骨には異常がない
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- 脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、梨状筋症候群などの状態がみつかる
- これらの状況から予測し、上記症状が原因で坐骨神経痛が起きていると診断
簡単な話にすると、腰から下の原因不明の痛みや痺れは坐骨神経が原因と言っておけば話が早いのです。
見落とされている筋肉の影響
脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニア、梨状筋症候群などの根本の原因となっているのは他でもなく筋肉です。筋肉が硬く縮こまった状態が続くことにより負担が他の場所にかかり、結果脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアといった症状を引き起こしているのです。
腰椎椎間板ヘルニアが原因ではなく結果だということは過去の記事を参照ください。
ところで坐骨神経痛の原因とされている脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、梨状筋症候群には共通することがあります。いずれも「腰痛」を伴っているのです。つまり、これらの診断を下された人の多くは腰痛を患っているのです。腰痛の原因は「筋拘縮」でしたから、坐骨神経痛と診断される人は腰痛で悩む多くの人と同じ、筋肉が原因で痛みが発生していると言えます。
実際、坐骨神経痛のお客様に私たちは、内転筋、ハムストリングスなど、お尻や足にかけての筋肉を緩めることによって改善しています。筋肉は硬くなると血管を圧迫し、血流が悪くなります。正座をした後のように痺れが出ている状態を、施術により筋肉を柔らかくして、血流を正常な状態に戻すことによって痛みや痺れを改善しているのです。ここで注目していただきたいのは、坐骨神経を圧迫しているとされている部分を施術していないにも関わらず、痛みや痺れが取れているということです。この事からいかに坐骨神経痛というものが曖昧に診断されているかが分かると思います。
坐骨神経痛を改善するには
坐骨神経痛を改善するには、根本原因となっている筋肉と直接原因となっている筋肉両方にアプローチする必要があります。「根本原因=腰痛」ですので、ここで言う根本原因の筋肉とは「大腰筋」のことです。直接原因の筋肉とは、血管を圧迫して血流悪化を直接引き起こしている筋肉になりますので、大内転筋、腸骨筋、ハムストリング、ヒラメ筋などが該当します。
これらの筋肉にアプローチすることによって、症状を改善していきます。ケースによっては、直接原因の筋肉を後回しにして、根本原因となっている大腰筋からアプローチします。この場合は、直接原因となっている筋肉を緩めないので、最初は痺れや痛みの変化があまり起きません。一見効率が悪いように思えるのですが、根本原因から改善した方が長い目で見た場合は効率よく改善することができるため、このような順番でアプローチすることもあります。
さて、今回は坐骨神経痛についてお話しました。
現状は、原因不明の腰から下の痛みが発生していればほとんどの場合、坐骨神経痛と診断されます。脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアといった坐骨神経に関わると考えられている症状が併発していれば、間違いなく坐骨神経痛と診断されてしまいます。
これらの症状は神経圧迫が原因なのではなく、筋肉のロックが原因で起こっていますので、筋拘縮を解除することで痛みや痺れを改善することができます。
坐骨神経痛はあくまでその周辺に痛みが出ている現象の名前に過ぎません。
坐骨神経痛という名称に振り回されることなく、根本原因にしっかりとアプローチすることができれば、症状の改善だけでなく今後の予防にも繋げることができます。
お尻や脚が痛いので「坐骨神経痛」と思うのでなく、様々な角度から見ることが大切です。