腰痛は、慢性化してなかなか痛みが緩和しない代表的な症状です。今回は、その原因と対策として「タンパク質」との密接な関係についてお話ししたいと思います。
腰痛の原因
まずはじめに腰痛の主な原因となっているものは何だと思いますか?
- 腰の筋肉が弱いから?
- 背骨に負担がかかっているから?
実は腰痛の主な原因は、お腹の前側の筋肉「腸腰筋(腸骨筋と大腰筋を合わせた呼称)」等の股関節屈曲筋群です。
腰が痛いのにお腹側の筋肉?と思われる方が多いですが、お腹周りの筋肉が太く短くなった状態、筋拘縮の状態が続くと体は全体的に前の方へ傾き、姿勢を起こそうと無意識のうちに背中側の筋肉たちが絶えず引っ張っている状態が続きます。
綱引きの相手が徐々に強くなっていってるのでその分引っ張り返している、ような想像でかまいません。
よく「マッサージ等で一時的には良くなったけど・・・」という方が多いと思います。これは背中の筋肉の血行が良くなったりで一時的に痛みが軽減している状態ですが、お腹周りの筋肉が筋拘縮の状態なので日常的に負荷がかかり元に戻ってしまうというわけです。
この「日常的に背中の筋肉に負担が掛かっている状態」を解除してあげることが腰痛改善の近道と言えます。逆に、この根本を改善しないと腰痛改善は難しく、また悪化するとさらに腰への負担が増え、結果「ぎっくり腰」や「椎間板ヘルニア」等の二次的症状も引き起こしかねません。
「腹筋をすると腰痛になる」というのは最近のトレンドですが、これはお腹側の筋肉に必要以上の負荷がかかり、更に筋拘縮が蓄積していくとその分背中側の筋肉に負担が増えることが原因と言えます。
「なら背中の筋肉を鍛えれば治るのでは?」と思う方もいるかもしれません。
では普段から必要以上に引っ張っている背中の筋肉は果たして弱いと言えるでしょうか?絶えず軽い筋トレしているような背中の筋肉は決して弱いわけではありません。
なぜその筋肉が負担になるような状態ができるかというと、、、
それは「筋肉の質」です。ムキムキなボディビルダーは腰痛にならないのでしょうか?彼らもまた腰痛に悩まされる内の一人なのです。
筋肉の質とタンパク質
筋力がある筋肉は硬く太いイメージですが、本当に質の良い筋肉とは柔軟性(伸縮性)に富んでいます。子供の筋肉が柔らかいのは筋力がないのではなく柔軟に伸び縮みできることを意味しています。この柔軟性こそが腰痛改善の鍵とも言えます。筋肉チューニングによる筋拘縮の解除はこの柔軟性を取り戻す手段の一つですが、もう一つ重要になってくるのは今回の題材でもある栄養素、「タンパク質」です。
タンパク質は我々の身体を維持するために必要不可欠な栄養素です。そもそもタンパク質は筋肉や髪の毛、臓器など身体のあらゆる部分の元となっています。
「タンパク質=筋肉」のイメージを抱く人も多いかと思います。ですが、実際は細胞をはじめとするホモ・サピエンスの身体を作る基本の栄養素こそがタンパク質なのです。
さらにはエネルギー産生の代謝においてもタンパク質は深く関わってきます。基礎代謝や新陳代謝などで一度は耳にしたことのある代謝という言葉。「外部から取り入れたものを分解合成してエネルギーに変える」という意味で、例えば植物だと光合成、人間だと呼吸も代謝の内の一つです。
この代謝の中でもタンパク質は重要な役割をします。まず、タンパク質は体中で20種類のアミノ酸に分解されます。分解された20種類のアミノ酸は組み合わせを変えることによって身体のあらゆるところで活躍していきます。と言う事は、タンパク質でできている筋肉や臓器を動かすためにも、さらにタンパク質を使うという事になります。
そしてビタミンやミネラル等の補酵素と呼ばれるものを働かせるためにもタンパク質が必要になります。補酵素とは名前のとおり酵素の働きを補う役割をしています。ビタミンやミネラル等の補酵素は一度酵素に結びつき体内に届けられます。この酵素の役割もタンパク質が行なっています。
これだけ色々なところで活躍するタンパク質ですが、不足すると別の場所から分解されたアミノ酸を再利用し、合成して別の場所で使われます。再利用することで体内のアミノ酸のバランスが崩れ筋肉はもちろんのこと体内の様々な部分に影響がでてきます。
筋肉の話に戻ります。前途の通り柔軟性に富んだ筋肉は腰痛改善の鍵になるとお話しましたが、筋拘縮を解除をする場合もエネルギーを使います。タンパク質が不足することによりエネルギー産生が不足し代謝障害がおきると、その場で筋拘縮は解除できたとしても、またすぐに筋拘縮の状態になってしまったり、そもそも筋拘縮が解除できないこともあります。
つまり、筋肉が緩みにくい体質の原因の一つはタンパク質不足にあるといっても過言ではありません。こういった栄養面での改善と筋肉チューニングがつながることによって筋肉の質を本来あるべき姿に戻すことができます。
タンパク質足りてますか?
タンパク質は体内に入ると20種類のアミノ酸に分解されるとお話しましたが、その内9種類は体内では合成することができず、食事で摂る以外の方法がありません(必須アミノ酸と呼ばれるものです)この9種類の中には筋肉に深い関わりのあるアミノ酸も含まれています。ということは筋肉の質を上げ、腰痛改善につなげるためにはタンパク質は必須になってきます。
では1日にどれだけのタンパク質が必要になるのかを考えてみましょう。
運動量に応じて上下はしますが「体重×1~1.5した数値をグラムに変えた値」と言われています。体重が50kgの方で50g~75gが必要になります。これが意外と大変なのですが、たとえば牛肉の場合、100g当たり15g~20gのタンパク質が含有されているので、毎日400gのステーキを食べ続けなくてはなりません。もちろん日々牛肉だけを食べているわけではないのですが、含有量が多い食べ物でもこの程度しか摂取できないのです。
ここで気を付けないといけないのがタンパク質が多くても糖質が多いものはNGです。糖質は体内吸収も早く、余分な分はすぐに貯蓄に回ろうとします。これは糖分が元来は高級で貴重なエネルギー源だったため、ヒトには身体に蓄えようとする機能が備わっているからです。ちなみに脂質は1g当たりのエネルギー量が9キロカロリーなので4キロカロリーの糖質やタンパク質より多いので摂取カロリー過多になりがちですが、消費カロリーを越えない限り貴重なエネルギー源として蓄えておくべきです。
では具体的に食事に当てはめて考えてみましょう。
朝:ロールパン2個、ヨーグルト
昼:のり弁当
夜・パスタ、サラダ
多くもなく少なくもない1日の食事を想定してみました。
この食事例に含まれるタンパク質量は…
昼:のり弁当23.3g
夜:パスタ25g、サラダ1g
合計:57.9g
これだけ見ると一見1日の摂取量はクリアしていそうです。
では糖質はというと、
昼:のり弁当106.9g
夜:パスタ75g、サラダ1.7g
合計:216.6g
高タンパクな食事で1日に推奨される糖質は135gとされ、これではかなりオーバーしています。ですが一般的に日本人が摂取している糖質量は200-250gといわれているので不思議なことではありません。それだけ世の中は、糖質過多な食生活であふれています。
ここで問題になってくるには「糖質は速やかに吸収され、さらに少しでも多く貯蓄しようと体内が働く」と言う事です。(糖質過多が肥満のもとと考えられている所以です)一方でそのあとに入ってくるタンパク質のうち、余分なのもと判断されれば分解され体外へ排出されます。これでは折角とったタンパク質も台無しになってしまうという事です。
摂取カロリーは大事な指標ではありますが、その配分を間違えると結果効率よくタンパク質は摂取できず、代謝の効率が落ちてしまいます。つまり、糖質過多な状態ではいくらタンパク質を摂ってもその効果を発揮し難いということになります。疲れやすい、疲れが残るといった現代人の悩みは糖質過多によるタンパク質不足が代謝障害を引き起こしていると考えられます。
タンパク質を効率よく摂るための方法
では、糖質を減らしつつタンパク質を摂るためにどうすればいいか?
ここで真っ先にオススメするのが卵です。
卵はタンパク質の含有量が1個あたり7.5gと多く、糖質は0.25gと低糖質です。これを一日2、3個食べるだけでおよそ15~22.5gものタンパク質を手軽に摂取することができます。
さらに高タンパク質な食事に欠かせないのがプロテインです。「プロテイン」と聞くと筋トレのイメージが浮かぶ方も多いのではないでしょうか。しかし、このプロテインこそが体質改善の鍵となっていると言っても過言ではありません。
そもそもタンパク質は英語で「PROTEIN」。
プロテインとは言うならばタンパク質そのもので、その名の通りタンパク質の含有量も非常に多く手軽に摂取できるからです。
プロテインの商品にもよりますが、200mlの水に20~30g溶かして1日2杯飲むだけで30~45gのタンパク質が摂取できます。1杯だけでも1日の1/3程度のタンパク質を摂ることができるので誰でも手軽に始めれるかと思います。
これらを踏まえ「高タンパク」「適正糖質」な食事を心がけるだけで身体の代謝、細胞の生まれ変わりを促進させます。体質改善できれば、筋肉チューニングの効果も飛躍的に高まりますので、筋肉の柔軟性を確実に取り戻すことができるというわけです。実際に当サロンでプロテインの摂取をおすすめしているので、プロテインによる栄養改善を実施されて筋肉の質が向上されたというケースが増えています。
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- 腰痛の原因となる腸腰筋をはじめとする股関節屈筋群、それらの硬さ、いわゆる筋拘縮を解除するうえで、施術以外にも筋肉の質を向上させるために欠かせない存在がタンパク質です。
- 筋肉の質を向上させることにより筋肉本来の柔軟性(伸縮性)を取り戻し、前後の筋肉のバランスが整うことで腰痛の改善につながります。
- タンパク質は筋肉を構成する元でありながら身体のエネルギー産生にも影響し、不足すると筋肉の質が低下するだけではなく身体のあらゆる不調の原因にもなる重要な栄養素です。
- 現代の食生活においては糖質過多なメニューが多く、タンパク質を効率よく摂取できていない、もしくは1日の必要摂取量にも満たない生活をしている方がほとんどです。
これを機に高タンパク質生活を取り入れ、筋肉の改善だけではなく身体の代謝の促進がどのような好影響を与えるか体験されてみてはいかがでしょうか?