腰痛の対処方法としてストレッチを勧められた方もいらっしゃっるのではないでしょうか。
ここでは、腰痛改善という観点からストレッチについて考えてみようと思います。
一般的に言われているストレッチの効果
- 緊張を和らげ痛みを防止
健康増進や体質改善に効果のあるストレッチ。続けることで、疲れが溜まりにくくなり、回復も早くなります。また、ストレッチ後はアルファ波が増加し副交感神経活動が働くことが明らかになっています。体がリラックス状態になることで、睡眠の質もよくなると言われています。 - 可動範囲を広げ、柔軟性を高める
ピッチャーなどは肩甲骨の可動域が広がると、投球をする際に無理に肩を回さなくなるので肩を痛めたりなどの怪我の防止につながります。柔軟性が高まると代謝が上がるだけでなく、筋肉のもつポンプ作用も促進されて血行を改善すると言われています。 - 身体パフォーマンスの向上・疲れにくい身体・ケガの予防
スポーツ現場でのストレッチは、ウォームアップやクールダウンのときに行うもの、という意識が定着しています。筋肉が柔らかくなると怪我をしにくくなるだけでなく、同じ運動をしても、エネルギー消費やトレーニング効果が大きくなると言われています。 - 基礎代謝があがり、血行が良くなりダイエットにも有効
硬くなった筋肉は、血管を圧迫し血流阻害を起こします。ストレッチで筋肉が柔らかくなると、圧迫されて悪くなっていた血流が良くなり、酸素や栄養分が滞りなく行き届くので、代謝が上がります。ダイエットや足先の冷え症改善につながると言われています。 - 疲労回復に効果
運動や日常生活でたまった老廃物や疲労物質などは、血液に乗って運ばれ分解されます。血行が良くなるとこの循環が早くなるので、疲労回復に効果があるとされています。 - 肩こりや腰痛の改善
柔軟性が低くなると関節により大きな負担がかかり、痛みを引き起こすことも。ストレッチにより、筋肉や腱が伸びることで関節への負担を減らし、肩こりや腰痛を緩和、改善させることができると言われています。 - ケガの予防
ストレッチで、柔軟性を高めると筋肉を動かすことにより、筋温が上昇します。ウォームアップなどで行うと、運動によるケガや筋肉痛をある程度予防することができます。 - 心身の老化予防
ストレッチで身体を動かして柔軟性を高めることは、心と身体をリラックスさせ緊張を解きほぐすだけでなく、心身の老化予防に効果があると言われています。
ストレッチのメリットとデメリット
先ほどもお伝えしたように、ストレッチの代表的なメリットはいくつかあります。
- 筋肉ならびに結合組織の柔軟性の改善
- 筋肉の緊張緩和
- 血流改善
- 神経機能の向上
- 筋萎縮の抑制
デメリット
一方で、体が柔らかくなりすぎたり、ストレッチをした後に運動することでデメリットが生じる事があるとも言われています。
競技や種目によっては必要以上に可動域を広げすぎることが、実はケガの元となってしまっているのです。
また、2013年、『ジャーナル・オブ・ストレングス・アンド・コンディショニング・リサーチ』に発表された研究によれば、17人の運動選手にバーベルスクワットを行ってもらったところ、事前に静的ストレッチをした場合、最大反復回数は8%落ちたうえ、下半身の安定度が23%落ちた事が報告されています。
また、ザグレブ大学の研究者たちが100本以上の論文に目を通した結果、静的ストレッチは筋力を平均5.5%弱めることを発見した事が明らかになっています。
さらには、「同じ姿勢を90秒間保つストレッチを行なうと、筋力が一層弱まる」との報告もあります。
つまり、静的ストレッチは筋肉の緊張を取る効果はあるものの、その分、脱力してしまい、パフォーマンスにつながりにくいとも言われています。
腰痛に対してはストレッチが逆効果になることも
イメージしてみてください。
カチカチに硬くなって伸び縮みの出来ない筋肉を無理やり伸ばすストレッチと、柔らかくてふわふわした伸び縮みが出来る筋肉を、気持ち良い程度の力を加えてストレッチをする。
どちらの方が効果的でしょうか?
カチカチに硬くなっている筋肉=筋拘縮を起こした筋肉は、筋肉に力が入り、縮こまっている筋肉です。
その状態の筋肉に無理やり伸ばす力を加えたら、どうなってしまうでしょうか?
その負荷に耐えられず筋肉が切れてしまったり、負荷に耐えようとして余計な力が筋肉に加わることも考えられます。
その結果、筋肉の筋拘縮が増えてしまう恐れもあるのです。
ストレッチが決して悪い訳ではありません。
ただし、筋肉の筋拘縮という現象を知らないまま無理なストレッチを行うと、求めている効果とは逆の結果を得てしまうリスクもあるのです。
ストレッチを効果的に行うためには、筋肉がなぜ硬くなっているのかを知る必要があります。
筋肉が硬くなるメカニズムについては、こちらをご覧ください。
もしストレッチをするのであれば、負荷をかける前に筋肉の筋拘縮を解除し、柔らかく伸び縮みが出来る筋肉を増やしてからストレッチを行ってみて下さい。それだけでストレッチによるリスクを回避できるだけでなく、ストレッチの効果を高めることができます。