「筋拘縮」という言葉を初めて聞かれたのではないでしょうか。
これは私たちの造語で、普通であれば力が入る時には硬くなりリラックスした際にはやわらかくなる筋肉。それが、硬く縮こまった状態が続く筋肉を「筋拘縮」と呼ぶようになりました。
腰痛の原因は骨ではない?
私たちをを悩ませる腰痛。厚生労働省による「国民生活基礎調査」(平成29年)という国民の健康状態を調査した結果によると、病気やケガなどの自覚症状がある人のうち、最も多い症状は、男性の1位腰痛、2位肩こり。女性の1位肩こり、2位腰痛です。
日本整形外科学会と日本腰痛学会が2012年にまとめた「腰痛の診断指針」によると、原因が明らかではない非特異的腰痛が全体の85%を占めると書かれています。
つまり、ほとんどの腰痛がレントゲンやMRIで確認できる骨ではなく、別のものが原因になっているということなのです。
腰痛は肩○○と一緒
一般的に腰痛の原因として、
- 骨が歪んでいるから、神経が圧迫されて痛い
- 筋力が衰えることで身体のバランスが崩れ痛みが出る
しかし、骨や神経自体が痛みを感じることはなく、椎間板ヘルニアでよく言われる「神経が圧迫されて痛い」ということも根拠がありません。
詳しい説明は別記事でご紹介しますが、結論だけを言ってしまいますと、腰痛の原因は神経の圧迫や筋力の衰えが原因ではありません。
それでは、骨や神経、筋力低下が原因ではないとしたら、腰痛の原因は一体何なのでしょうか。
あなたは肩こりや首こりを経験したことはありますか?
肩こりや首こりがひどくなると、じんじん痛み出したり、特定の姿勢を取るのが辛くなってしまいますよね。実はそれと同じことが腰でも起きているのです。
腰痛というのは腰こりのことなのです。
それでは、肩こりや首こりはどうして起きるのでしょうか。これは恐らく想像しやすいと思います。
肩こりや首こりの原因が骨や神経、筋力低下からくると思っている人はほとんどいないはずです。ほぼ全ての方が筋肉のこりが原因と答えるのではないでしょうか。
つまり、私たちが「筋拘縮」と言っているものは「筋肉のこり」のことでもあるのです。
筋拘縮になるメカニズムの1つ
筋肉は、急激に引っ張られるなど、無理な力が加わったり、椅子に座りっぱなしなど、持続的に負担がかかると、損傷から守る為に反射的に収縮します。いわゆる伸張反射と呼ばれるもので、「縮んで守れ」という信号を出してシートベルトのように硬くなる機能が備わっています。
一言で表すと、筋肉が硬くなるのは、「筋肉を守る仕組み」と言うことになります。
この人間が持つ防御反応をもう少し詳しく見て行きましょう。
筋肉の中には、筋紡錘と呼ばれる、筋肉の伸縮度を感知するセンサーがあります。
このセンサーには、筋肉を保護する機能が備わっています。
例えば、誰かに急に腕を取られ、引っ張られたとします。筋紡錘は、このように過剰に筋肉が伸ばされた状況をいち早く察知し、この情報を脊髄に送ります。脊髄から筋肉に「縮んで守れ!」という信号を送り、筋肉は瞬間的に縮むことで、断裂などの損傷から身を守っているのです。
脳まで信号を送って判断すると時間がかかってしまうので、このような緊急の場合は、筋紡錘の判断だけで筋肉を縮めます。
これが伸張反射(脊髄反射)です。
この時、筋肉への負荷が強く、また急激なものであればあるほど、筋肉が収縮したままで戻らなくなります。
また負荷が長時間に渡ってかかる場合も、同様に筋肉が硬くなったままになります。
筋拘縮の状態になりやすいかどうかは、様々な条件によって変化します。今までの経験から、ストレスや睡眠、栄養状態などの条件が悪いと、筋肉は硬くなりやすいです。
また、筋拘縮の筋肉が増えると、他の正常な筋繊維への負担が増え、正常な筋肉も巻き込んで筋拘縮は進んでいきます。
筋拘縮によって、どうして腰痛などの痛みが発生するのかはこちらをご確認ください。
「筋拘縮」を解除する方法の1つ
硬くなった筋肉が、本来の柔らかさを取り戻すためにはどうしたら良いでしょうか。
例えばマッサージのように、揉みほぐすのはどうでしょうか。
マッサージには老廃物を流すという効果があり、一時的に筋肉のこりが楽になった感覚が得られますが、硬くなった筋肉が元の状態に戻ることはありません。
むしろ、筋肉は「伸ばされる」と察知して、さらに縮んでしまう可能性もあります。
逆に、筋肉が「もう縮まなくて良い」と認識すれば、本来の柔らかさを取り戻すことができます。
そのためには筋肉を伸ばすのではなく、たるませてあげる必要があります。
簡単にイメージしやすい例を挙げます。
例えば、ももの裏の筋肉を触って見てください。膝を伸ばすと、筋肉も一緒に伸ばされる感覚が分かると思います。
反対に、膝を曲げるとどうでしょう。
それまで伸ばされていた筋肉がたるんで、柔らかくなったことに気づくはずです。緩めたい筋肉の端と端を近づけてあげるだけで筋肉は緩むのです。
筋肉は「自分を守る」ために縮もうとしています。まずは縮んだ状態(たるんだ状態)を作ってあげて、「これ以上守る必要はないんだよ」と言うことを教えてあげれば、自然に元の柔らかさに戻るのです。
「筋拘縮」を解除する4つのステップ
- まず、筋肉をグリグリと押して、硬くなった筋肉を探します。
「痛い」、「痛気持ち良い」、「気持ち良い」、「くすぐったい」、「何も感じない」という場所は筋拘縮の状態になっています。
このとき、筋繊維の走る方向が分かれば、それを直角に切るような形で触ると、上記の感覚はより分かりやすくなります。 - 次に筋拘縮の筋肉が緩む姿勢を見つけます。違和感のある場所を押しながら姿勢を変えていき、違和感が消えたら、それが筋拘縮が解除される姿勢です。押しているところの筋肉をたるませるイメージで身体を動かすと見つけやすいです。
- 次に、緩めている筋肉に力が入らないようにリラックスした状態で2の姿勢を90秒間キープします。
- 90秒経ったら、ゆっくり元の姿勢に戻します。戻し始めは特にゆっくり動かすのがポイントです。急に戻すのではなく、手を添えるなどして、緩めた筋肉に力が入らないように元の姿勢に戻します。
セルフ筋肉チューニングを試してみよう
実際にあなたも筋拘縮を解除してみてみませんか。
筋拘縮を解除するのは難しいことではありません。「セルフ筋肉チューニング」は道具も広い場所も必要なく、誰でも簡単に硬くなった筋肉を緩めることができます。
セルフ筋肉チューニングの基本動作は、「筋拘縮」を解除する4つのステップを自分自身で実践するものです。
「探す」→「ゆるめる」→「キープする」→「戻す」
これだけです。
それぞれの筋肉には特徴があり、緩める姿勢も様々です。
まずは、セルフ筋肉チューニングの動画を参考にしてみてください。
*クリックすると様々な箇所の筋肉のセルフ筋肉チューニング動画が掲載されている「UROOM Instagram」が見れます。
筋拘縮の状態がひどい人は、筋肉の緩む角度がピンポイントになるため、緩む姿勢を見つけるのが難しくなります。どうしても違和感が消える箇所が見つからない時は、「少しでもグリグリと押している時に感じる違和感が消える姿勢」をとってみてください。
筋拘縮を解除してもらいたいときは
セルフ筋肉チューニングではなく、プロのセラピストの施術をご希望でしたら、一度私たちにご相談ください。