今まで腰痛Labでは、腰痛の原因や痛みの発生メカニズム、腰痛の症状などについてなどお伝えしてきましたので、このあたりで一度、私たちが腰痛に対して具体的にどのようなアプローチをしているのかについて、いくつか記事を書いてみようと思います。
腰痛の原因
腰痛には大きく分けて、「腰を反らすと痛みがでる腰痛」と「腰を曲げると痛みが出る腰痛」の2つのタイプがあります。それぞれの腰痛がどんなものなのかについては、別記事をご覧いただくとして、いずれの腰痛も約9割は「筋拘縮」が痛みの主な原因です。私たちはこの「筋拘縮」を解除することによって、腰痛を改善しています。
そもそも筋肉は「守る」ために、硬くなっている
筋拘縮とは、筋肉が硬く縮んだ状態をずっと維持してしまっていることです。みなさんがよく耳にされる言葉で使用するなら、「コリ」や「張り」なども、筋拘縮を表す言葉ということになります。
そもそも、筋肉が硬いままの状態を維持してしまっている、と言うと、それが「異常なことで、悪いこと」だと思っている人が多いのですが、決してそうではありません。私たち人類が進化してきた中で、筋肉が硬くなったままの状態を維持する仕組みが退化せずに、現代の人類までその仕組みが残っている時点で、この筋肉が硬くなる仕組みは私たち人類にとって必要だと言えます。
それでは、何のために筋肉は凝り固まっている必要があるのでしょうか。
一言で表現すると「守るため」なのです。
実は筋肉は仕組み上、硬く縮むことしかできません。もし、筋肉にON、OFFのスイッチがあるとしたら、ONの時は硬く縮んで、OFFの時は縮むのやめるという動きをします。筋肉は決して自ら伸びることはできないのです。ですから、筋肉は何かをしようと思ったら、自分自身は縮むこと、もしくは力を抜くことでしか対応できないのです。
筋肉にとって、負荷になるのは伸ばされる力が加わった時です。筋肉がたるむ方向に力が加わっても、筋肉には全く負荷はかからないですよね。逆に伸ばされる力が加わると、筋肉はちぎれてしまう可能性が出てきますので、守ろうとします。この時に力を抜いて守るのか、それとも力を入れて守るのか、どちらの守り方が有効でしょうか。
力を抜いて伸ばされるままになってしまうと、筋肉がちぎれてしまう可能性が高くなってしまいます。ですから、筋肉はそれ以上伸ばされないように硬く縮んで、負荷から自分を守ろうとするのです。
この「守るために、筋肉が縮むスイッチがONのままになってしまっている状態」が「筋拘縮」ということになります。私たちは、「筋肉チューニング」という施術を通して、「筋拘縮」の状態のON-OFFをきちんと切り替えることができるようにしているのです。
筋拘縮の3レベル 「筋攣縮」「筋拘縮」「筋硬症」
筋拘縮は、全て同じ状態かというと、決してそうではありません。レベルがあります。
このレベルを表すために、私たちは「筋攣縮(きんれんしゅく)」「筋拘縮(きんこうしゅく)」「筋硬症(きんこうしょう)」という言葉を用いていますが、これらの言葉は一般的に使われている定義と違い、私たちが今まで行ってきた膨大な回数の施術を通して、私たちなりに定義したものになりますのでご注意ください。
筋攣縮(きんれんしゅく)
圧痛あり。筋拘縮は解除されやすい。
筋肉のセンサーのズレが少ないため、この状態の筋拘縮は、場合によっては軽めのジョギングや初動負荷、アクティブストレッチ、ヨガ、ピラティスなどの運動だけでなく、マッサージなど様々な施術でも解除されることがあります。
少しだけ話が反れますが、私たちの体は決まった仕組みに則って筋肉を縮めています。筋肉が硬くなってしまう要因はいくつもありますが、必ずその仕組みのいずれかの箇所に作用して硬くなっています。
「筋肉チューニング」で主にアプローチしているのは、「筋紡錘」という筋肉のセンサーです。ここでは詳しくは書きませんが、このセンサーから筋肉に縮めという指令が繰り返し出続けている状態が「筋拘縮」ということになります。
これ以外にも例えば老廃物なども筋肉を硬くする作用が確認されています。この場合は、筋紡錘よりもさらに筋肉が縮む現場に近い、筋肉の細胞中の仕組みに作用して硬くなっています。マッサージなどをして、楽になったというケースは、この溜まっていた老廃物が流れることによって、筋肉の硬さが改善されたのですが、もし、この状況下で筋肉のセンサーにも原因があった場合は、マッサージ直後は一時的に楽になっても、すぐに硬さが戻ってしまいます。
「筋拘縮」のメリットの一つとして挙げられるのは、施術により筋肉のセンサーをリセットする際に血流を正常な状態に戻すこと。筋肉のセンサーおよび老廃物の二つに同時にアプローチしているのです。
筋拘縮(きんこうしゅく)
筋攣縮よりも酷い状態。筋拘縮している期間が長く、筋肉を押された時の感触も圧痛ではなく、気持ちいい、くすぐったい、場合によっては硬すぎて何も感じないこともあります。骨と間違えるくらい硬くなっていることも。イメージとしては、枯れ木を触っているような感触です。
この状態の筋肉は、場合によっては運動などで悪化してしまうこともあるのです。筋拘縮している期間が長いため、筋肉が柔らかくなるのに必要な栄養も足りていません。
意外に思われるかもしれませんが、筋肉はスイッチがOFFになるためにも栄養が必要です。筋拘縮している時は、毛細血管が圧迫されて血流がストップしてしまうからです。毛細血管の太さは7μm前後、赤血球の直径は7-8μmと、実はほぼ同じ位なのです。これは、赤血球と血管が触れる面積をできる限り増やして、効率よく酸素や栄養、老廃物のやりとりするためだと考えられています。通常、赤血球よりも細い毛細血管であったとしても、弾力性のある赤血球が変形することによって、毛細血管の中をすり抜けていくのですが、筋拘縮して硬く太くなった場合には、毛細血管が圧迫されてしまうので赤血球がその場所を通過することができなくなってしまいます。
筋拘縮(きんこうしゅく)の状態が長く続くと栄養だけでなく、酸素や必要な体液も不足してきますので、指先の感触ではカラカラの状態になります。そして潤滑油の代わりとなる体液が少なくなっているため、筋膜にも影響を与えてしいます。
このような状態になると、骨付着部付近の筋拘縮のチェックが特に難しくなります。往往にして筋肉と骨の付着部は体の表面よりも、奥にあるため、ただでさえ触りづらい上に、骨と筋肉の付着部分が骨のように硬いと、骨なのか筋肉なのかの判断が難しくなるためです。
対処方法としては、筋拘縮を解除すると同時に、より栄養が筋肉に届きやすいように長めに筋拘縮を解除する姿勢をとることになります。筋拘縮を解除する姿勢は、筋肉のセンサーをリセットするだけでなく、血流も正常な状態にします。(筋拘縮を解除する具体的な方法は別の機会にまた説明します!)
筋拘縮を解除する姿勢をとっていても、筋肉が柔らかくなるために必要な栄養が血液中に不足していると、せっかく筋肉のセンサーを調整できたとしても、筋肉は柔らかくなれないので、筋拘縮を効率よく解除することができなくなってしまいます。筋拘縮が筋硬症よりも酷い場合は、筋肉に必要な栄養を多めに摂取してもらうことで、施術の効果が下がってしまうことを防いでいます。
筋肉と栄養については、ここで説明すると長くなってしまいますので、こちらのサイトを参考にしてみてください。
適量糖質高タンパク質食がつくる良質な筋肉
筋硬症(きんこうしょう)
筋拘縮の最終段階です。
触った時の感触としては「ぶよっ」とした感触です。この状態の時には、筋肉を押してもほぼ何も感じることはありません。筋拘縮との違いは、筋拘縮は柔らかくなるための栄養が不足している状態に対し、筋硬症は筋肉が縮むのに必要な栄養も不足している状態です。
ですから、筋拘縮よりも筋硬症の方が、筋肉の触った感触としては柔らかいのです。
慣れない方ですと、正常な筋肉と筋硬症の筋肉を触った時の違いが分からないことがありますので、筋拘縮のチェックには熟練度が必要です。
筋硬症の筋拘縮を解除すると、一見正常な筋肉のような感触になるのですが、少しでも刺激を加えると、元のぶよっとした状態、もしくは湿り気のある筋硬症の状態に戻ります。この状態の筋拘縮は繰り返し解除する必要があります。筋肉を柔らかくするための栄養を多めに摂取するのは大前提ですが、緩めては刺激を加えることを繰り返し行う必要があります。
以前はこの状態の筋肉を改善するのに時間をだいぶ要していましたが、この方法を見つけてからは以前よりも改善するスピードが上がりました。ただ、それでも緩めるのに時間がかかるケースであることに違いはありません。できれば、こうなる前に私たちの施術を受けていただきたいというのが私の本心です。
腰痛が自然によくならないのであれば
今回は、筋拘縮のレベルと、私たちがレベル別に対処するアプローチについて書いてみました。
普段されている運動や、体のケアで腰痛が改善しないのであれば、本格的に「筋拘縮」を解除する必要があります。皆さんの体の現在の状態を知ることができると思いますので、腰痛で困っておられる方は一度「筋肉チューニング」を受けてみてください。