整形外科では腰痛に対する療法の90%以上で、まず第一に保存療法が選択されています。保存療法では医師の処方による内服薬や注射に加えて、理学療法が行われていますが、現時点で保存療法の中で効果的な治療法がないのが現実です。保存治療の中でも、今回は牽引治療についてお話したいと思います。
牽引の目的と効果
一般的に牽引はどのような目的で行われているのでしょうか。また、どのような効果を期待されているのでしょうか。牽引について説明されているものをいくつかピックアップしてみました。
牽引の目的
持続的に牽引することによって筋肉のれん縮を取除いたり,骨折や脱臼などを整復する治療法をいう。整形外科分野の疾患に広く応用され,特に腰痛症や骨折に対して用いられている。牽引療法は普通,患肢にベルトを固定して滑車と重錘によって牽引力を加えるが,腰痛症では,上体を固定しておいて骨盤帯で腰椎に牽引力を働かせることにより,疼痛の軽減をはかる骨盤牽引が行われる。骨折では,絆創膏や牽引用バンドを用いるほか,大きな牽引力を要するときには,骨に特殊な鋼線を刺入したあとで牽引を加える直達牽引法を行う。
出典: ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について
- 椎間関節周囲軟部組織の伸張
- 椎間板、椎間関節の軽度の変形、変位の矯正
- 椎間関節の離開、免荷
- 椎間孔の拡大化
- 攣縮筋の弛緩
また他の文献では、「年齢や外傷のために変形したり、椎間板ヘルニアになると骨や椎間板が脊髄や末梢神経に当たり、身体の一部に強い痛みや痺れ、運動麻痺などが起こってしまうところを牽引治療を行い、頸椎や腰椎を引っ張ることにより、骨同士の圧迫を軽減したり、ズレを矯正し痛みをなくす」などと書かれていました。
牽引の有効性
今でも整形外科などで診察を受けた際に、牽引治療を勧められた方は多くいらっしゃると思いますが、牽引治療の有効性について賛否両論の意見が交わされていることはご存知でしょうか?
その理由として、牽引治療を行なった後、効果があるどころか逆に、腰痛や脚のしびれなどが悪化したといった報告例が数多くあるからです。
日本腰痛学会から2012年に出版された「腰痛治療ガイドライン2012」には、「腰痛に対する牽引治療を患者2206人に対して行なった。単独治療としての牽引治療は、プラセボと比較して、3ヶ月後及び12ヶ月後の疼痛、機能、可動域、欠勤などのすべての項目において有意性がないことを示す質の高いエビデンスが存在し、腰痛患者全般に対する牽引治療が有効である可能性は低い」と書かれています。
また、福島県立医科大学の菊地臣一教授の著書「続・腰痛をめぐる常識のウソ」の中でも「骨盤牽引は腰痛の患者さんに治療効果があるという証拠はない」と書かれています。
つまり、日本腰痛学会や整形外科の教授でさえも有効性に疑問を持つ治療法なのです。
腰痛の原因
牽引治療の有効性が低く、痛みが悪化する人たちが多くいる理由として、腰痛の原因を見誤っていることが挙げられます。
腰痛の原因の多くは「筋拘縮」です。筋拘縮とは、筋肉が慢性的に力が入ったままの状態になることで、筋肉を負荷から「守る仕組み」によって起こります。筋肉の筋拘縮が体の中で増えていくと、慢性的に血行不良を起こし、局所的な酸素不足によって疼痛が引き起こされます。それが慢性腰痛の原因です。
ここで、イメージしてみてください。硬くなった筋肉は、私たちの体を守ろうとして硬くなり、そのスイッチが入ったままの状態です。そこへ外から無理に引っ張る力がかかると、どんなことが起こるでしょうか…? ますます力が入ってしまう、そんなイメージが出来ますよね。そうです。守ろうとしている筋肉に対して外から引っ張る、押すなどの負荷は更にその守る力を強くさせ、結果的に硬い筋肉=筋拘縮を増やすことになってしまうのです。そうなると益々血流は悪化し、痛みが強く出てしまいます。これが牽引治療後、痛みや痺れなどの症状が悪化してしまう理由なのです。
根本的に腰痛を改善するには
腰痛の原因の多くとして、「筋拘縮」が関係することはご理解いただけたかと思います。
筋拘縮をなくし、酸素不足を改善することで、腰痛は改善されます。
まずはぜひ筋拘縮を解除する「セルフ筋肉チューニング」を試してみてください!
上記の記事やセルフ筋肉チューニングの説明、動画が記載されている「UROOM Instagram」がありますので、ご参照ください。
筋拘縮を解除し、痛みのない人生を送りましょう!